twitter小説 【1】

 

青空から入道雲が顔をのぞかせている。汗にぬれたワイシャツが肌に貼りついてうっとうしい。「ほらよ」 彼から差し出されたのは一本の清涼飲料水。お互い一気に飲み干して「ぷはっ」と息を吐けば、どちらからともなく笑みがこぼれた。

 

その建物は、床も、壁も、たくさんの本が収められた本棚も、すべて塗りつぶされたかのように真っ白く染め上げられていた。 同じく真っ白な少女がその中央で妖艶な笑みを浮かべていた。彼女は両手を広げ、我々を歓迎する。「ようこそ、わが図書館へ!」

 

祝福の鐘が鳴る。真っ白なスリップドレスにシロツメクサの結婚指輪。大好きな君に手を引かれて、私は世界一幸せな花嫁になるの。だから早く迎えに来て?ずっと待ってるの、神様に手を引かれて逝った君の帰りを。もう一度君に会えたなら、今度こそ、その手をとるから。

 

壁越しのあの子は今日も彼と二人きり。悪夢だらけの現実のなかで、幼い少年が歌う幻に、頭までどっぷり浸かるのだ。だから俺は、ひっそり息を止める。義妹になったあの子を癒せるのは、過去の俺にしかできないみたいだから。

 

私の宝物は、十年前に買ったこのCD。稀代の歌声と賞賛された少年のソプラノが、無口な義兄とのすさんだ生活の中で唯一の安らぎを与えてくれた。もう彼と私以外、みんな消えてしまえばいいのに。

 

私がいなくても世界はまわるのかもしれない。私がいなくても彼女たちの関係は変わらないのかもしれない。それでも私は「お〜いアヤ、弁当くれ!」「おはようタカト、昨日ぶりね」…ああもう。今日も今日とてつっこまざるを得ない!

 

自殺に成功した彼らは私にとって等しく英雄だった。何度踏みとどまり、何度失敗しても諦めず悲願を達成した彼らは、この世の成功者と呼ばれる人間とどう違うのだろうか。英雄になりそこなった私は今日も薄暗い部屋で夢を見る。

 

どうか忘れないで。私はずっと、貴方のそばに在ります。時には前を歩いて道を照らし、時には後ろで貴方の行き先を見守りましょう。貴方はけして一人ではないのです。どうかどうか、忘れないで…。―そうして足元のキミは、今日も私をじっと見上げている。

 

あと数秒の命でもかまわない。泣いている君が一瞬でも僕を見て笑ってくれたなら、僕の生涯は幸せだったと言えるだろう。暗闇の中に打ち上げられたら僕は、何万人の中にうもれる君に、祝福の手をさしのべた。―――ハレルヤ、ハレルヤ。(テーマは花火)

 

目の前で彼女が泣いている。もう一時間はたっただろうか。肩を震わせながら、ひっくひっく、と嗚咽まじりに。僕はおおきくため息をつき、そっと彼女の背中に腕をまわした。夕ごはん出来てるけど」「食べる」 失恋しても、彼女の食欲はあいかわらずだった。


友だちと喧嘩して、ドラマを見て、失恋して。くだらない理由で泣きじゃくる私を、彼は部屋から追いださない。しばらく一人で泣かせてくれて、それから大きな腕で抱きしめてくれるのだ。「夕ごはん出来てるけど」「食べる」私は今日も、彼の不器用な優しさに甘えている。

 




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