twitter小説 【9】



 

 

 

うちの執事とメイドは仲が良い。もしやデキてるのかと聞けば、実は二人は双子なのだという。言われてみれば確かに顔立ちが似ている気も。「私が兄で、こっちが弟なんですよ」そうメイドに紹介された執事が照れたように頬を染めるって、ちょっと待て。兄で弟ということはメイドは (七歩 (@naholograph)様主催企画 『よいこ大賞〜メイドノベルオンリー』応募作品)

 

エプロンドレスの裾を翻し、闇夜に紛れてメイドが駆ける。懐に抱えるは幼い赤子。屋敷を襲った惨劇を知らぬまま、赤子はすやすやと眠っている。「貴方は、私が必ずお守りします」奥様から託された最後の希望。幼い主を胸に、メイドは先の見えない暗闇を走り続けた (七歩 (@naholograph)様主催企画 『よいこ大賞〜メイドノベルオンリー』応募作品)

 

執事が作るお菓子はどれも美味しい。私に仕えて数年、彼の作るお菓子にハズレはなかった。なぜそんなに上手に作れるのか。「簡単なことです。お菓子を食べてくださる方の笑顔を思いながら作るのです」そういってスマートに微笑む執事。私の目を見ながら言うなんて卑怯だ。(七歩@naholograph)様主催企画 『よいこ大賞〜メイドノベルオンリー』応募作品)

 

気づけば世界が揺れていた。蛍光灯のヒモをかすかに揺らすだけだったそれは家の床をも揺さぶりだす。けれどもテレビは今日も速報が入らない。はてと首をかしげれば、また世界がぐらり。震源地は私だった。私だけしか感じない揺れはどんどん強くなり、私の世界を埋めてゆく

 

悪い夢なら覚めてほしい。エンドロールの中で勇者は思った。魔王を倒し続けて数百回。繰り返す日々に勇者は飽き飽きしていた。1つだけ残された希望は闘う度に魔王が強くなること。「そろそろ私の番かな」力なく笑みを溢す。あと何回繰り返せば、彼は私を殺してくれるのだろう

 

みじん切りの玉ねぎを炒め、飴色になったところですりおろしニンジン。牛乳に塩コショウ、味を整えて完成だ。濃いオレンジ色のポタージュを口に運べば、ニンジンの芳醇な香りとコクが広がる。おいしい、けど 「ママの味にはまだ遠いね」 舌に残るざらつきにさみしさが募る(有賀 薫@kaorun6)様主催企画『読むスープ』応募作品)

 

怖い夢を見た。無数のゾンビが追いかけてくる。逃げて逃げて逃げ続けて、私はようやく彼らを振りきった。ああ助かった。そう息をついた瞬間、足元から生えた腕が私の太ももを掴む。そしてそのまま、湿った土の中へと引きずりこんだ。今日も私は、夢から抜け出せない。

 

両手を広げて水面を目指す。こぼれた気泡は優雅にきらめき、一足先に浮かんで消えた。 私はほの暗い水の底から差し込む光めがけて腕を振るった  水から顔を出した金魚はそこが自分の生きる世界ではないと知る。浮かび上がった光の先は、蛍光灯によって作られたまがい物だったからだ(ついのべの日お題:「UP)

 

動悸、息切れ、震え、めまい、痛み、盲目、炎症、微熱、痴呆。全部が全部、君と出会って発症した病名。知っているでしょう?  この病気の本当の名前は。 君が消えて、病はもっとひどくなった。

 

ステッキを持った老紳士が立っていた。そこへ刃物を持った男が襲いかかる。危ない、と叫ぶよりも早く、男が道に突っ伏した。「まだまだ若造だね、出直しておいでよ」そう一言笑うと、老紳士はステッキから引き抜いた刀をしまい、夕闇へと消えていった。何者なんだろう、あの人。




back top next









2014,06,21