twitter小説 【3】



 

十年来の妻が市販のチョコをくれた。昔は手作りだったのに。少し残念に思っているとなぜか妻は自分の口にチョコを運ぶ。「それじゃあこれから愛情こめまーす」口の中に広がる甘い味 乱れた息の僕に妻はにっこりほほ笑んだ。「あと五粒あるからね」愛情たっぷり、いただきます!

 

「理由が述べられなければ、恋とは呼べませんか」瞳をうるませながら見つめる君。「君はまだ若い」僕はゆっくりと首を降った。別れは、すぐそこまで近づいている。「卒業おめでとう」 教え子たちの門出を見送る。ぽろぽろと涙を流す君に、名も無き恋に、今、別れを告げよう。

 

キミの夢を見たような気がする。いつも浮かんでは消える別れのシーン。鉄橋の下で、ぽたりとこぼれ落ちた涙はだれのもの? あのときキミは、そして僕はどんな顔でさよならを言ったんだんだろう。一人ベッドの上でこぼした涙は、正真正銘僕のもの。

 

大切なものをなくしすぎた君はまるで人形のようだ。伏せられた瞳は光をうつすことなく、指一本動くこともない。木漏れ日のさし込む部屋の中で君は静かに眠っていた。「これで、よかったんだよね」とどめを刺した僕は小さくこぼした。彼女の口元の笑みが本物であってほしいと願いながら。

 

愛してる、ささやくのは愛しい彼。女心を知り尽くした彼は私のことを何でもわかってくれる。私も大好きだよ、と満面の笑みで答えれば、彼もまた笑ってくれた あの子が私を見てくれなくても、を愛してくれるならそれでいいの。私はあの子にとって理想の男でありつづけるわ

 

黄昏時に君を隠して、僕は逃げだしたんだ。大陽が顔を出す朝も月が冷たく輝く夜もただがむしゃらに走りつづけた。そうすれば、君を傷つけることはないと思って 気づいたら君は夕闇の向こうへ消えていた。行かないで、子どもの僕。僕は君をなくすために大人になったんじゃないんだ

 

大好きな貴方を見上げるのがイヤで、僕は必死に努力した。苦手な野菜も食べたし、毎日牛乳を飲んで背を伸ばした。すこしずつ縮まる距離に貴方もほほ笑んでくれて。それでも今、貴方のとなりには違う人。二人の門出を見送る僕は、また少しだけ大人になった。

 

これらは我々のすべてが詰まった夢うつつ。誰かが妄信し、誰かが体験する物語。さあいらっしゃい。貴方にはこれがどんな形に見えるかね? ネット界隈の片隅で幻想作家たちは今日も物語を紡ぐ。頭をかけめぐる幻の姿をとらえようと。

 

伸ばした指先に蝶がとまる。淡い色のそれはふわりと舞い上がり、格子のすき間から薄暗い部屋へと入ってくる。久しぶりの来客だ。私は口元を緩める。しとしとと降る雨の中、ひとりと一匹は一時の逢瀬を楽しむ。二度と出ることのかなわない、座敷牢の中で。

 

夢の中で彼に会った。高校の時と変わらぬ姿で、たわいないことを話して笑いあった。話しかけることもできなかったあの頃には考えられない。目を覚ますと、床に転がった酒瓶。二日酔いか、頭が痛い。水を・・・いや、ミルクティーが飲みたいな。彼が大好きだったミルクティーを。




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2013,11,02