twitter小説 【4】



 

地獄に落ちた男に与えられたのは蜘蛛の糸。たったひとつの救いを、男は払いのけた「俺には地獄がお似合いだ」真っ逆さまに落ちていく自身を嘲笑う「ならば共に堕ちましょう」見れば生前助けた蜘蛛が指に糸を結わえる。本当の救いはここにあったのだ。

 

「人は死ぬと星になるんだよ」小さい頃に母が語ってくれた。だから寂しくなんてないんだよ?いつでも会えるんだから。けれど今日の夜空は雨模様。嘘つき、寂しいよ。雨粒に乗った星は、愛しい人に会いに行く。「ほら、会えたでしょ」懐かしい母の声に、僕は笑顔を向けた。

 

私は開いていた本を閉じた。案内板には、まだ私の番号はない。待ち時間の長さに思わずため息をついた。この時期の渋滞は予想していたものの、ここまでかかるとは。あの世で暮らす死者たちの帰省ラッシュ。公共車両は今年も満杯でなかなか家に帰れない。

 

かぐや姫は月から何度も戻ってきた。時には戦乱に、太平の世に、現代にもまた姿を表す。姫の美しさに魅力された人々は、あらゆる手段で他人に伝えた。「今度の私はどんな女の子になるのかしら」伝言ゲームの果ての自分を想像しながら、姫は今日もアレンジされた竹取物語を読む 

 

昨日失った手のひらは、もう帰ってこないかもしれない。明日には、笑顔をなくしているかもしれない。『でも、それでも信じていれば、きっと。』満天の星空の下、背を押す風はまだ冷たいけれど。昨日でも明日でもない、今日を生きる僕を信じよう

 

月が太陽に恋したように、私はあなたに恋をした。かなわない想いだってわかってる。だからせめて一瞬よりも長く、あなたの目に止まってみせるわ。さあ、準備はいい? ふと空を見上げると、箒星が流れていた。青い尾は僕の心をつらぬき、夜空のむこうへ消えていった。

 

もういいよ、と彼女が言った。指輪の入った箱を閉じ、俺の手を握る。『言葉も、指輪もたくさんもらったから』冷たくなっていく手のひらに俺はようやく気づいた。そうか、もういいのか。うなずく彼女の手を固く握りかえし、俺は目を閉じた。もう二度と離さないように

 

ごめんなさいと君が言う。どうしてと僕が詰め寄っても首を振るばかり。煮え切らない返答に彼女の家を飛び出した。あの日のサヨナラの意味を僕は知らない。 他国の侵攻があったのはその数日後。焼け野原になった地に響くのは、思い出の君と慟哭の声。 

 

荒れ果てた野原でいき倒れた僕。飢えた野犬がかみつこうとした瞬間、一発の銃弾が野犬の頭を打ち抜いた。「無事か?」差し出された手は大きく、そして暖かかった「それが僕と嫁のなれそめです」「嫁?旦那でなく」「嫁です」

 

「この程度のかんざし、誰にでも買ってあげているのでしょう?」 くすくす、と口元を隠し微笑むあなた。「ええ、そうですよ。よくご存知で」見開かれた目はまるで満月のよう。「なので、貴方にはこれを」握らせたのはべっ甲の櫛。「苦死(くし)をも共に」満月からぽたりと雫がこぼれた




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2013,11,02