twitter小説 【5】



 

 

雨上がりの暗い夜道を歩いていた。前は少しも怖くなかったのに、今はもう泣きそうだ。そのとき現れたのはいつもより大きな満月。それと、瞬くホタルの群れが一斉に飛びたった。思い出したのは君と手をつないだあの夜道。私は一人光の群れをかき分ける。大丈夫、君は今もそばにいる。

 

今日は特に機嫌が悪かった。だから道端ですれ違ったやかましい女子高生の集団にも苛立ってしょうがない。ついに沸点をこえようとした時、突然の強風が。スカートちらり。露わになった白い太ももに、あれ? 俺の嫌悪感、どこいった?

 

真っ青な空に浮かぶ、白い斑点。太陽光線に熱された砂浜に、アスファルトに、真っ白な雪がしんしんと降り積もる。決して溶けないそれは、私の体にも優しく降り注いだ。失恋の傷痕から、ふたたび芽が出るその日まで、どうかおやすみ

 

規則的に響く鈍い音。目を開ければ、ひどく濁った海の中。伸ばした手は宙を掻き、生ぬるい感覚はいつも不安定だ。けれど不思議と怖くはない。君と僕をつなぐものが確かに存在するから。けれどそれでも時々さみしくて、僕はふてくされたように足を動かす。「あ、動いた」

 

終わらせるはずだった。悲しいこともつらいことも僕で終わりにしよう。そう思っていたのに 。 腕の中で上がる産声にハッと息をのむ。終わらせるはずだったぬくもりは確かに脈を打っていた。絶望ばかりの世界でも、それでも生きてほしい。君たちという希望を見つけた僕のように

 

思い出味のアイスを買った。見た目はただの棒付きアイス。けれど一口かじれば、思い出が舌の上でしゅわりとはじけた。レモン味、ソーダ味、みかん味。かじるごとに違う思い出が蘇る。ふと棒を見ると文字が。『もう戻らない日々、お味はいかが?』最後の一口は、コーヒー味だった

 

透明色の傘は空を飛ぶ。雨風にのまれ、くるりくるりと弧を描く。人の手を離れ、大空を舞うことのなんとすがすがしい気分だろう。もう傘として使えなくなったって、構わない。ひしゃげたビニールの向こうで、雲のすき間から七色の光が差し込んだ。

 

今日はなんてひどい雨だ。透明傘は飛ばされ、全身ずぶ濡れ雨坊主。おまけにしばらくやみそうにない。でも、いいんだ。もう少しだけ、君と雨宿り出来そうだからさ

 

彼の想いが肌の上をすべり落ちる。雨水のようなそれはいくつもしたたり、私の身体を濡らしていく。けれど、ひどく熱い想いと裏腹に私の心はどんどん冷めていく。ああ、優しい君を愛して上げられればよかったのに。過去に捕らわれた私は今日も手のひらでぬぐう

 

この世界に絶対なんてないの。写真だってただの紙切れで、どんどん古くなっていく。いつか私もすりきれて捨てられちゃうのかな?だったら今の一瞬だけ、私を愛してよ。一分一秒ごとに変わる私で、一生好きでいさせてやるんだから!

 




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2014,02,19