twitter小説 【7】



 

 

白く積もった道を歩く。ブーツの靴底が雪道に点々と足跡をつけた。春には消えてしまうそれは、けれど私の中で決してなくなりはしないのだと誰かが教えてくれたような気がする。マフラーで口を隠しながら私は笑みを浮かべた。春はもう、すぐそこまで近づいている。

 

空に落ちる夢を見た。どちらが上かもわからない、君の手のひらだけが私のすべてだった。なのに君は、子どものようにはしゃぎながら私の手を離れていく。淡い水色に消える体を、私はずっと見つめていた。目を覚ました私は空を見上げる。夢の中の君が笑っていてよかった。

 

右腕をへし折ってやった。その声が嫌いだから、舌も引っこ抜いた。君を傷つけるものはもうないのに、怯えた瞳は戻らない。はて、あとは何をすればいいかな。首もとに手を伸ばすと君がすがりつく。「優しいね」髪を撫でながら、反対の手で男の喉を掻ききった 「こんなゴミにも」

 

「全部わかったわ。早く犯人を捕まえなくちゃ」小柄な体が弾むように駆けていく。齡十四にして街の名探偵である彼女。その助手の自分にはある秘密があった。「おいてっちゃうよ!」しびれを切らした少女の声に、慌てて自分も駆け出す。 貴方の助手は、殺人犯なんですよ

 

閉じられたまぶたの上に水滴がかかる。無意味だとわかっていながら、僕はそれを丁寧に拭った。これから旅立つ彼女に涙は似合わない。深い藍色の中へ沈んでいく彼女に僕は最期の言葉を投げかけた「おやすみなさい」 細い指が、たゆたう黒髪が、波紋の中へと消えてゆく

 

よくも騙したな、しわがれた男が吐き捨てるように呟く。騙したとはひどい言い草だ。元はこの男が望んだことだというのに。 小柄な少年は手に持った大鎌を男に向けた。「残念、ゲームオーバーだね」 切っ先が喉元に食らいつく。かすむ意識の先で、死神が不気味な笑みを浮かべていた

 

親愛なる君へ、という題名からはじまる手紙。そちらの具合はどうだとか、こちらの近況はこうだとか、ありきたりな言葉が罫線の上を埋め尽くしている。僕は苦笑いを浮かべながら、手紙の主に想いを寄せた。僕は、君が思い描いていた大人になれただろうか 拝啓、十五年後の僕へ

 

#僕が神様だったなら   特になにもしない。助けを求める人がいても僕は絶対に手をさしのべない。たとえ神様の力で助けられるとしてもね。え、なんてひどいやつだって?   何いってるの、そんな君こそどうなのさ。神にも救えない今の世の中の惨状 をどう説明するつもりだい。ねえ、××様?

 

「新しいものを買ったら古いものは捨てましょう。それが掃除の極意です」遠くでテレビの声がする。なるほど合理的だ。ということは夫のこの行為もある意味的を得ているのだろう。リビングの床で首を絞められている私は、他人事のようにそう思った。『新しい女を作ったら』

 

彼女は素直ではない。甘えるのも苦手だ。しかし何年か前、一度だけ彼女から抱きついてきたことがある。「どうしたの、珍しい」なにも答えない。何回かの押し問答のあと、根負けした彼女がぽつりと呟く「わ、私が甘えたら悪いのか、馬鹿」当時、萌えという言葉はなかった。




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2014,04,28